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二十七歳

 みんな大好きロックミュージシャン。人気者ゆえ心労も絶えないのか、昔から二十七歳になると突然あの世に呼ばれてしまう──『二十七倶楽部』の会員になる有名アーティストが後を絶たないらしい。ねえ、そういうの、ネズさんは入会しないでくださいね。遠くへ行かないで、ずっと元気でいて。

 こちらに背を向けて眠る人へ、自分勝手な言葉を投げる。そうしたら「おまえを置いて死んだりしませんよ」なんて、寝息を立てていたはずの背中から呆れたような、だけど優しい声が聞こえた。ネズさんがごろりと寝返りを打って、穏やかな笑みを浮かべているのが見えた。その姿があまりにも美しくて、なぜだかこれが最後かもしれない、明朝にはもう行方を眩ませているかもと不安になったけれど、ネズさんはわたしと一緒の布団にくるまって夜を明かしてくれた。

write:2020.09.29

edit:2020.10.29

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