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​おうちでクリスマス

 十二月二十四日。ネズさんと二人で宅飲みがしたいですと誘ったら「この日なら空いてます」と提示されたのがクリスマスイブだった。
 そんな大事な日をわたしなんかと過ごしていいんですか!?と慌てたら「予定なくて暇してたんで、おまえさえよければ二人でゆっくり過ごしましょう」と言われたので、ありがたくお言葉に甘えることにした。わたしも予定がなくて寂しいクリスマスを過ごすところだったから。
 そして、せっかくだからとささやかなクリスマスパーティーをすることになった。わたしはあまり料理が得意ではなく、ネズさんが「簡単なものでよければおれが作りましょうか」と言ってくれたので、ケーキとお酒を買ってきた。ネズさん、喜んでくれるといいな。

 

「おかえり、ちょうど料理が完成したところですよ。手を洗ってきてください」
 スパゲッティ、シーザーサラダ、チーズフォンデュ、ローストチキン、それからそれから……!家に帰ったら、とっても美味しそうな料理がテーブルの上に所狭しと並べられていた。思わずよだれを垂らしてしまいそうになる。はやる気持ちを抑えつつ手を洗ってうがいをして、ケーキを冷蔵庫に入れて、いそいそと席についた。買ってきたお酒をお揃いのグラスに注ぐ。
「ありがとうございます。それじゃあ、乾杯しましょうか」
 グラスをぐいと傾け、いつもなら買わないようなちょっと高めのお酒を飲んだ。まろやかな口当たりで飲みやすい。気持ちがふわりと高揚する。
 ネズさんが作ってくれた料理をお皿によそって、ぱくりと口に含む。とっても美味しい……!!!!ネズさんがわたしのために真心を込めて作ってくれた料理。美味しいな、嬉しいな、ネズさんとこの日を過ごせて本当によかったな……。
「なんだかにこにこしてますね、美味しいですか?」
 美味しいです!と正直に伝えたら「本当ですか、よかったです」と微笑んでくれた。
「おかわりもありますから、好きなだけ食べてくださいね」

 

 沢山あった料理はみるみるうちになくなって、冷蔵庫に仕舞っておいたケーキもぺろりと食べてしまった。テレビではクリスマスソング特集を放送していて、ネズさんとの会話も弾んで、なんだかとっても楽しくなって、お酒もいつもより沢山飲んだ。頭も体もふわふわする。楽しいな、気持ちがいいな。

「おれ、今日という日をおまえと過ごせて嬉しいです」
 ネズさんがとんでもないことを口にしたような気がした。わたしの聞き間違いかな、酔っ払いすぎて変な妄想しちゃったのかな。だって、わたしたち付き合ってないのに、そんなこと、……。
「今年は本当に色んなことがありましたけど、おまえとは色んな場所に行って、沢山の思い出を共有しましたね。こんなに充実したクリスマスは初めてですよ。他の誰でもなく、おまえと一緒に今日を迎えられてよかったです」
 聞き間違いじゃなかった。わ、わたしもです。この一年、色々と大変だったけれど、わたしもネズさんと過ごせてよかったです……。そう呟いたらネズさんもとっても嬉しそうに笑ってくれた。ああ、ネズさんのこと大好きだなあ、来年のクリスマスも一緒にいられたらいいな。そんな夢を見てしまうほど、わたしは甘くて幸せな気持ちになった。

 

☆Merry Christmas!☆

write:2020.12.24

edit:2021.05.13

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