コーヒーと紅茶と、それから
ネズさんとふたりでお出かけできることになって、ショッピングに付き合ってもらった。密かに想いを寄せている人と並んで歩くなんてめちゃくちゃ緊張してしまって、最後の買い物を終えた頃にはもう喉がからからになっていた。
「欲しかったもの全部買えました?」
あっ、はい!買えました!ありがとうございます。急に話しかけられてとっさに返事をしたら、声が裏返ってしまう。ネズさんが小さく笑った。
「たくさん歩きましたよね、喉乾きませんか?きみさえよければ、ちょっと休憩していきましょう」
近くのカフェに入ったら、窓際の席に案内された。必然的にネズさんと向かい合って座る形になって、思わず緊張してしまう。わたしがどぎまぎしているうちにネズさんはもうメニューを開いていた。
「おれ、コーヒーにします。きみはどうします?何か食べますか?」
ネズさんがメニューをこちらに向けてくれた。うーん、飲み物は紅茶にしようかな。だけど、せっかくだし甘いものも食べたいな。たくさんあるスイーツの中から二択までは絞れたけれど、そこから先に進めない。この店で一番人気らしいフルーツタルトか、期間限定のフォンダンショコラか。どっちにしようかな。なかなか決められずメニューとにらめっこしていたら、「険しい顔してますけど大丈夫ですか」と声をかけられる。あっ、お待たせしちゃってすみません!
「どれとどれで迷ってるんです?」
えっと、これとこれなんですけど……。メニューを指差したらネズさんはすぐに「すみません」と店員さんを呼んだ。え!?まだ決められていないのに。どうしよう、どうしよう。
「ブラックコーヒーひとつ、きみは」
あ、紅茶でお願いします……あと、どうしよ、えっと……。
「あと、フルーツタルトとフォンダンショコラ、ひとつずつお願いします」
えっ!どちらかひとつ選ばなきゃと思っていたのに、ネズさんはわたしより早く注文してしまった。店員さんがぺこりとお辞儀をして去っていく。わ、わたし、ふたつも食べられません。あわあわしていたらネズさんがクク、と笑った。
「おれも何か食べたくなったんで。半分こしませんか」
は、半分こ……!ネズさんはコーヒーしか頼まないと思っていたのに、わたしが迷っていたから気を遣ってくれたのかな。ネズさんはわたしが困っているといつも先回りして助けてくれる。優しくて、わたしなんかよりずっとおとなで、すごくかっこいいな……やっぱり好き……。どきどきして思わずうつむいてしまいそうになったけれど、ネズさんをまっすぐ見据える。あ、あの、ありがとうございます!そう口にしたら「お礼はきみからの『あーん』でいいですよ」と言われ、ひい……!と声にならない叫びをあげてしまう。優しいのにちょっぴりいじわるなネズさんが楽しそうに笑った。
Twitterの #nz夢書き当て企画2021 に参加させていただきました!
write:2021.02.18
edit:2021.08.01