お疲れ様のハグ
「今日もお疲れ様でした。こっちへおいで」
ネズさんが手招きしている。今日も色んなことがあって疲れていたけれど、大好きな人の声を聞いたら、強張っていた全身の筋肉がほぐれたような気がした。
思わず抱っこ……と呟くと、彼は笑って腕を大きく広げてくれる。たまらなくなってその胸に飛び込む。ネズさんはわたしを包み込んで、ぎゅう、と強く抱き締めてくれた。
「いいこいいこ、よしよし。今日もよく頑張りましたね。毎日朝から晩まで、本当にえらいですよ。頑張り屋さんなおまえが大好きです」
そう言いながら、大きな手がふわふわと頭を撫でてくれる。なんだかくすぐったくて小さく笑みをこぼした。すると、頭上からさらに優しい声が聞こえた。
「でも、誰かの期待に百パーセント応えようだとか、弱音を吐かず頑張ろうとか、決して無理はしなくていいんですからね。おまえのペースでいいんです」
まさかそんな言葉をかけられるとは思わなくて、思わずネズさんを見上げる。
「それから、おれがいつでもそばにいるんで、何かあったら遠慮なく頼ってください。こうやってぎゅって抱き締めて、今日あった良いことも良くないことも、何でも聞いてやりますからね」
優しい色の瞳に見つめられ、色んな気持ちが溢れそうになってまた顔をうずめた。
「ふふ、よしよし。今日も生きていてくれてありがとう。大好きなおまえのこと、ずっと近くで見守っていますからね」
わたしもネズさんのことが大好きです。いつも優しい言葉をかけてくれて、沢山励ましてくれてありがとう。……照れくさくてうまく言えないけれど、いつかちゃんと恩返しできたらいいな。
わたしも大きな背中にぎゅっと腕を回し、愛しい人を抱き締め返した。
write:2020.10.14
edit:2020.10.29