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​優しくて甘いエール

 やっと終わった……!やるべきことを全て終わらせ、ぱたりとノートパソコンを閉じる。うーんと大きく伸びをしながらリビングへ行くと、あれ?ネズさんがいない。どこかに出かけちゃったのかな。スマホを開くと『コンビニに行ってきます、すぐ戻ります』とメッセージが入っていた。そっか、コンビニかあ。

 

 ソファに座ってしばらく待っていると、がちゃりと鍵の開く音がした。

「ただいま」

 ネズさんが帰ってきた!嬉しくなって玄関まで駆けていく。おかえりなさい、そう声をかけたら「作業終わったんですね、お疲れ様です」と労ってくれた。

「おまえにおみやげがあります」

 ビニール袋を手渡される。何だろう?

「いつも頑張っているおまえに、おれからのささやかなエールです」

 袋を覗いたら、おいしそうなロールケーキがふたつ入っていた。え、ネズさん、これを買うために出かけてたんだ。びっくりして、嬉しくてぱっと顔を上げる。ネズさんも優しい顔をしていた。

「紅茶でも淹れて、おやつにしましょう」

 

 お気に入りの紅茶を淹れて、お揃いのティーカップに注ぐ。ロールケーキもお洒落なお皿にのせて、ふたりで「いただきます」と手を合わせた。

 スプーンで掬って、ぱくりと口に入れる。ふわふわのスポンジと優しい甘さのクリームが疲れた心と身体を癒してくれるようだ。おいしい、とってもおいしい……!

「おいしいですか?」

 うんうんと大きくうなずく。ネズさんもケーキを口に運び、「本当だ、おいしいですね」と微笑んだ。

「最近のおまえ、疲れているみたいだったんでちょっと心配していたんですよ。少しでも元気になってくれたのならよかったです」

 ……ネズさん、わたしのこと気にかけてくれていたんだ。

 ひとくちケーキを頬張るごとに、甘さとともにネズさんの優しさも口のなかでほどけて、全身に染み渡っていく。えへへ、嬉しいな。全部投げ出してしまいたいと思ったこともあったけれど、最後まで頑張ってよかった。

「おまえが毎日頑張っていること、おれはちゃんと知っていますからね。おまえのこと、いつも応援していますよ」

 ネズさんは優しいな。ありがとうございます、だいすき……!そんな気持ちを込めて笑ったら、ネズさんもふにゃりとわたしのだいすきな笑顔を見せてくれた。

ロールケーキのギフトをいただいたときに執筆したものです。素敵なギフトありがとうございました!♡

write:2020.12.13

edit:2021.05.13

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